PICK UP ARTIST / MAGO DE OZ
2006年現在、KORPIKLAANIやFINTROLLなどによってフォークメタルは随分と盛り上がりを見せていますが、それらフォークメタルバンドの大先輩に当たるバンドをご存知でしょうか。スペイン発のMAGO DE OZというバンドです。SKYCLADよりはちと遅いですが、90年代前半からわかりやすいフォークメタルを武器に、本国では一番の人気を得ています。
私自身思い入れの強いバンドで、初めて触れた時の衝撃は今でも忘れません。
ところが、いくらスペイン一番人気と言ったところで、スペインなど所詮は辺境。多くの人はそんなバンドは知らないという状態だと思います。曲的には数年前から世界に十分通用するものを持っているのに、特にここ日本では、まったくの無名バンドでした。でした、というよりも、現在進行形で無名です。
近年では全米デビュー、そしてツアーまで行っているというのに、そのワールドワイドな活動に反して無名と言うのは、ファンとしてはあまりに悲しい。初めに言っておきますが、現在の彼らはEDGUY、RHAPSODY、あと近年ではDRAGONFORCEですか、あの辺りと比較しても全然遜色無いバンドなのです。それなのに、なぜ無名? 無論、ライターがここまで掘り下げようとはしないからです。
送られてくる音源を聴いて思ったことを書くだけ、「紹介」という仕事をしないのが今のライター。じゃあ、しゃあないからその「紹介」という仕事を、私が受け持ってやろうじゃないか。それでお金が一銭だって入るわけではないけどな。
というわけで、スペイン産フォークメタルバンド、MAGO DE OZの全アルバムを紹介します。ちなみに、フォークメタルバンドと言っても、実際はフォークの要素を取り入れた何でもありのロックバンド、といった感じです。巷のフォークメタルよりはずっと身軽で多彩な音楽性を持つバンドですので、フォークメタルマニア専用という狭い音楽やってるわけではないですよ。
デビューはなんと93年。この頃は基本的には陽気なスパニッシュロックを演るバンド、という感じで後年の姿とスムーズには繋がりませんが、何曲かでは既にフォークメタル路線が花開いています。
オズの魔法使いのキャラクターに扮したメンバーのジャケットが笑いを誘うファーストアルバム。かなり陽気でノリノリのスパニッシュロックが展開される作品です。後の姿を知っているファンは、①のアメリカンなバイオリン入りロックンロールに拍子抜けするでしょうけれど、②で早速フォークメタルを披露。当時似たようなバンドと言えばSKYCLADしかいなかったので、その中でこの品質というのは凄いことだったんじゃないでしょうか。しっかりメタルで、その上フォークして、それなのにわざとらしいおちゃらけが全く感じられない名曲です。哀愁のメロディーラインも◎。中盤スピードアップしてからのかっこ良さが絶句級でして、FINTROLLを許さないようなメタルゴッドもこれなら許してくれるだろう、と思います。
ただ、③以降また①のノリに戻ります。挙句サックスのソロまで飛び出して、どんどんメタルからかけ離れて行く始末。⑥なんてなんですか、西部劇にそのまんま使えそうな曲ですよ。「YANKEES GO HOME!」なんて叫んじゃって。好きか嫌いかで言うと私は大好きですけれど、フォークメタルとして評価できるのは②と9分の大作「Mago de oz」くらいのもので、アルバムとしてはフォークメタルファン全体にオススメ! とは言いがたいものがありますので、購入は他のアルバムを集めてからで充分だと思います。
ちなみに後のアルバムでヴォーカルを取っているJoseはまだ加入しておらず、代わりにJuanmaというヴォーカリストが参加しています。これがこの路線にぴったりの、良い声の持ち主で、アルバム一枚だけの参加となってしまったのが惜しまれます。
96年、バンドは新ヴォーカリストにJoseを迎え、ここで新路線を打ち出します。前作で見られたスパニッシュロック路線が完全に消えたわけではありませんが、今の姿に繋がるレインボー+ジューダス+フォークという路線が中心となり、バンドは独自のフォークメタルを完成させました。
新しいヴォーカリストのJoseはちょっと弱弱しいけれど、情感こもったハイトーンヴォイスの持ち主で、以降このバンドの顔となります。
タイトルには小さく「Opera Rock」と書かれていますが、そっち方面の期待をすると拍子抜けする作品です。それ風に作っている部分もありますが、全体を見ると音楽性が多彩すぎて、一本のコンセプトの上にある作品として見るにはちょっと無理があるでしょう。
ただ、その多彩な音楽性に目を向けてやると、このアルバムの評価は★三つ分ぐらい上がります。
前作を彷彿とさせるスパニッシュロックもあれば、今回は100%マジのメタルもあるし、おちゃらけ曲もあれば、100%フォークの曲もある。それだけ多彩な音楽性ながら、しかし難解さはゼロです。フォークメタルファンだけでなく、面白い音楽を探している方にもオススメしたい作品です。
バンドとしてもまだ今ほどの人気はなく、好き放題できる時期だったのだと思いますが、そんな自由な状態がプラスに作用した、創作意欲溢れる傑作です。ここらでそろそろ、といった具合にジューダス並にわかり易く、レインボー並のメロディーラインで迫るフォークメタルも登場してきて、フォークメタルファンなら卒倒すること間違いないでしょう。
さて、しかしここらでこのバンドも売れ始めてきたのでしょうか。ふらふらと自由な路線はここまでで、次からはいきなりメジャー級のメタルサウンドを完成させます。
98年、いよいよバンドはスタンダードを完成させます。メジャーに勝負、という気があったのかは知りませんが、メジャーで活躍するのに充分すぎる力量を持ったバンドであることをアピールした大傑作がこれ。
まずこのおちゃらけたジャケットに驚きますが、この後このバンドのスタンダードになります。毎回毎回、やたらと下ネタばかり盛り込んでいて笑えますけれど、音の方はそれに反してますます真面目になってきました。
イントロのトラッドがいきなりこれまでのマイナーメタルっぽさを吹き飛ばします。途中メタルになって、そのままバンド初のハロウィン風疾走曲「El Santo Grial」へ。この曲は本当、腰を抜かしますよ。ツインギターが重なるバリバリのメタルにバイオリンが絡み、そしてハンガリー舞曲へと繋がる無茶苦茶な展開を、しっかりと聴かせてくれます。まさかネオクラシカルをやろうと思ったわけではないでしょうけど、そっちのファンにもアピールできるぐらいの品質になったと思います。
タイトル曲なんて、ギターとバイオリンのハモリがソロに盛り込まれていると言う無茶苦茶な曲ですけれど、それもギャグを超えた説得力があるのですから、もう誰が文句を言えましょうか。
また、⑤はこのバンドの十八番、しかし前代未聞という「民謡シャッフル」の元祖でもあります。二枚出ているライブ盤の両方でトリを飾っていますから、これがバンド一番の代表曲と言うことになるのでしょう。確かに、その評価が相応しい名曲です。
さらに、⑪「El templo del adios」、曲名を見て勘の良い方ならピンと来たかもしれませんが、レインボーの名曲、「Temple of the King」のカヴァーです。泣きまくるヴァイオリンとスペイン語の語感によって、原曲の哀愁が五倍にも六倍にも引き出されている名演です。
他にも名曲揃いのアルバムで、とにかくアルバム全編通して、メジャーバンド並みの品質が味わえます。本当、聴いたこと無い人がお気の毒なぐらい。フォークメタルファンは全員買いましょう。メタルファンもできれば買いましょう。スペインなんて辺境の地からどれだけのものが届くのかと疑っているあなた、騙されたと思って買ってみなさいって。すぐにその偏見を恥じることになりますよ。
これだけのものが完成してしまえば、後は安泰という感じで、以降大幅な路線変更も無しに現在にいたります。
2000年、前作で完全に路線を確立したバンドはここで一つの記念碑を作り上げます。そしてそれは二枚組みの大作でありながら、スペインでゴールドディスクまで取ってしまいました。「FINISTERRA」、バンドの代表作です。
93年にこのバンドと出会った人は、一体このアルバムを聴いて何を思ったんでしょう。まさか、ここまで大きなバンドになるなんて、予想もつかなかったことだと思います。
ジャケットは相変わらずですが、このジャケットでしっかりゴールドディスクを獲得しました。二枚組みの大作ですが、それがゴールドディスク。このバンドが国民的バンドであるということが良くわかる事実です。
内容はあくまで前作の延長上にありますが、それでいてさらにスケールアップ。今回からは生楽器にフルートが加わり、(イントロ終わって)2曲目から早速大暴れしています。
ツーバスメタルwithバイオリンリフという無茶苦茶な個性は前作に引き続き花開いていますが、それでいて何の不自然さも感じさせないという究極の世界です。曲の素晴らしさもまた感動的なほどで、二枚組みという大作ながらだれることはありません。ラストに14分という大作が待ち構えていますが、そんな長い曲もしっかり聴かせてくれます。こんなバンド、滅多にいるもんじゃないですよ。本当。
出で立ちこそ変なバンドのままなんですが、このまんま世界に出ても充分戦っていけるだけの力量は持っているぞ、とその辺りを如実にアピールしてきた感じがします。そして、アピールだけに終わっていないとわかるのが⑩、「Es hora de marchar」。曲名見ても何がなんやら、ですけれど、レインボーの名曲「Rainbow Eyes」のカヴァーです。おちゃらけ民謡楽団という外見のこのバンドが、いきなり荘厳な雰囲気漂う姿になって、哀愁たっぷりに歌い上げています。なんかもう、この一曲でお腹一杯になりますよ。心洗われるこの名演は、全ての国の全ての世代を同じように感動させてくれることでしょう。誇張でも何でもなく、本当にそれぐらいの名カヴァーなのですよ。
他にも民謡シャッフル第二段となる「Fiesta Pagana」など、本当に名曲揃いのアルバムです。今度こそ本当に、全てのメタルファンにオススメしたい作品です。フォークメタルだとかそんなのは、この際どうでも良い。メタルにはまった経験があるなら、一度は聴いてみてくれい!
2002年、前作でゴールドディスクを獲得し、ノリにノッたバンドはいよいよ初のライブ盤を世に送り出します。
日本にいる以上、スペインなんて辺境の地からこのバンドがやってくる可能性など万に一つもありません。よって、このバンドはアルバムという作品に対する評価以上のものはできず、メタルには重要なライブの内容に関しては完全に闇の中でした。
しかし、ここに来てこのバンドもようやくライブ盤を出してくれました。満を持しての発売、と言うには待たされ過ぎた感じもしますが、国外展開などハナから考えていないバンドなので、まあ仕方無いでしょう。
で、肝心の内容ですが、どれだけ修正が加えられているかはわかりませんけれど、本当に聴き応えのある素晴らしいライブアルバムになっています。フルートが加わった編成での過去の作品の再現が絶句級の素晴らしさ。ベスト盤は一切出ていないバンドですけれど、アルバム収録時より素晴らしいテイクになっている曲も何曲かあって、これで充分ベスト盤の代わりになります。
演奏力もしっかりと欧米メジャー級であることが証明されましたし、ヴォーカルだってこれだけ歌えていれば充分です。加えて生楽器の暴れ具合といったら、あまりの凄さに言葉を失いますよ。スタジオ盤をなぞるだけではない、ライブの鑑みたいな演奏です。
そして毎回のお楽しみとなったカヴァー曲、今回はDisc1の9曲目、「Pensando En Ti」。って、書かれただけじゃわかりませんよね。私も聴いてびっくりしたんですけれど、「Dust in the Wind」、あのKANSASの名曲です。スペインの赤い大地を思わせるフルートによるイントロから、あの哀愁漂うイントロに繋がった瞬間の感動といったら……、今すぐにお聴かせできないのが本当に残念です。勿論このバンドがただ焼き直すわけが無く、原曲を崩さず哀愁五割増しの素晴らしいカヴァーになっています。
しかし、ライブ盤でもこれだけの作品を作って、このバンドはどこへ行くんだろう。そろそろ低迷期が来るか? と思った矢先、バンドはまた新しいバクダンを爆発させます。
2003年。前作でゴールドディスクを獲得したバンドは、ここで新たなコンセプトを掲げ、それに基づいたシリーズ「GAIA」をスタートさせます。そして、彼らはいよいよ世界の海へと船出する、その準備を始めました。
オーケストラ(風)の長い前奏で幕を開けるアルバムGAIAは、これまでのMAGO DE OZの姿からは考えられないほどのメジャー感覚で迫る名作でした。どこまで行ってもマイナーならではの味を忘れないバンドだと思っていたのに、独特の個性はそのままに、完全にメジャーバンドの出で立ちになってしまいました。それも、ベテランの風格まで漂わせています。
ジャケットはおなじみのあの絵ですが、それがこれほど惜しいと思ったのはこの作品が初めてです。内容が素晴らしすぎて、ただでさえチープなジャケットがますますチープに見えてしまうんですよ。このジャケットじゃこれっぽっちも表現できていませんけれど、音楽性の進化によって成長してきたこのバンドは、ここに来てついにその世界を広げることで新たな道を切り開きました。これまでだって充分世界に通用する作品でしたが、あくまでメタルという世界の中での話でした。しかし、この作品は違います。80年代、メジャーメタルの名作が一般洋楽として見てもしっかり名作だったように、このバンドはメタルのフィールドを出ずに一般洋楽化してしまいました。ここまで来れば本当に、洋楽ファンを巻き込んで世界的なバンドになってもおかしくない。そう思わせるスケール感です。
楽曲の充実度もこれまでとは比較にならないほどのもので、まさに全曲が名曲です。イントロ終えての②、いきなり10分超の大作ですが、その10分間全てが聴き所という凄まじい一曲です。爆走チューンは多少引っ込んだ感じですが、ツボを押さえた素晴らしい疾走チューンが3曲ほどあるので、そっち方面のファンも納得でしょう。十八番の民謡シャッフル、その最高傑作「La Costa del Silencio」は楽しげに響き、MAGO DE OZ一の名バラードとなった「La Rosa de los Vientos」は異国への憧れを聴くもの皆に抱かせてくれます。お得意のトラッドも本当に聴き応えのある曲になっていますし、オペラチックなパートが感動的なラストの大作もまた素晴らしい。最後までじっくりと鑑賞させてくれる、本当に名盤らしい名盤です。
それにしても、この好調ぶりは一体何なんでしょう。このバンド、スタート時からそれなりの作品を提供してくれていたのに、それから十年、低迷期は一度も迎えることもなく、逆にぬるま湯につかったような安定期に入ることもなく、アルバム一枚ごとに誰が聴いてもはっきりとわかるような成長をしています。
こうなったら次はどうなるのか、とただひたすら楽しみに待つだけです。このアルバムを聴けば、不安要素などゼロであることがすぐにわかるでしょう。
勿論、フォークメタルファンに限らず、メタルファンならマストゲットの作品です。相変わらず知名度は低いですが、聴いてみれば絶対、どうしてここまで知名度が低いのだ? と誰でも思いますよ。KORPIKLAANI? FINTROLL? あれよりずっと素晴らしいです。100点満点!
2004年。デビュー以来ずっと上り調子のバンドはここで全曲カヴァー+セルフカヴァーで構成された企画盤を発表します。
企画盤というとファン専用というイメージがありますが、確かにここで聴ける音は「GAIA」ほど八方美人な音ではありません。ファン専用とまではいかないと思うんですけれど、初めてこのバンドに触れるという方はあまりの個性に引いてしまうかもしれません。
しかし、内容はさすがのMAGO DE OZでして、今回もオープニングナンバー、BoneyMのカヴァー「Belfast」が凄いです。ラウドロックよりのメタルのようなギターリフにドスを効かせたヴォーカルが絡み、そしてラスプーチンに雪崩れ込んで疾走する、言葉で書けばなんじゃそりゃ、という展開ですが、聴いてみれば絶対に腰を抜かしますよ。世界は広いのです。
3曲目はGAIA収録のバラードのメタルバージョン。静かなバラードがツーバスドコドコ疾走メタルに変わっていて、笑ってしまうやら凄いやら。バラードのメロディーでロックしているということで、私はあのSTRYPERを思い出してしまいました。音の感じはちょっと違うけれど。爽やかな疾走メタルだから、SONATA ARCTICAなんかが近いのかな。
ハードロックファンにとって聞き物は「Dame tu amor」と「Dama Negra」でしょうか。前者は「Guilty of Love」、後者は「Lady in Black」、ハードロックファンにはお馴染みのあの曲のカヴァーです。前者はおしゃれなあの曲をこんなバンドがカヴァーなんて、と思わせて、意外や意外、結構はまってます。後者はもうこのバンドがカヴァーしないで誰がする! というような曲ですね。本領発揮の一曲です。
⑨はプレスリーの世界的に有名な名曲ですし、⑫はついに来た! のカヴァーです。ハワイアンの誰でしたっけ、名前は忘れましたけどその人の有名なヴァージョンに忠実なカヴァーですが、ここでもバイオリンとフルートの味付けが素晴らしい。
南米のレインボーと呼ばれたRata Blancaのカヴァーもあり、ファンにとっては本当に嬉しいアルバムであると同時に、このバンドの原点がハードロックにあることを確認できる良作です。
しかし⑦、凄くかっこいい曲があるんですけれど、これは誰のカヴァーなんでしょうか? 私も勉強不足です。イントロのギターリフからぐいっと引き込まれる疾走曲で、アルバム中でもトップクラスのかっこ良さを誇る曲なのに……。
2005年。精力的に活動を続けるバンドは早くも二枚目のライブ盤を発売します。その名も「MADRID LAS VENTAS」。マドリードの闘牛場で行ったライブを記録した歴史的一枚です。
前のライブアルバム「FOLKTERGEIST」も素晴らしい作品でしたが、まだまだマイナーバンドのおちゃらけ具合も感じられる、ファンに向けた作品である感じがありました。
ところがこの二枚目のライブ盤、そのおちゃらけ具合がぐっと引っ込み、かなりマジにメタルをやっています。前作GAIAを発表した辺りからそろそろスペインを出ようとしていたのかはわかりませんが、これでもう絶対にスペインから出るぞ、と確信させてくれるようなアルバムでした。これまでのスパニッシュメタル界の頂点はMEDINA AZAHARAやBARON ROJO辺りのバンドだったと思いますが、このアルバムで完全にそれらのバンドを超えました。
二枚通してじっくりと聴いてみて、本当に器用なバンドだと思いましたね。疾走メタルも軽快なハードロックも民謡調もプログレも軽々とこなしています。バイオリンがリフを取るシャッフル曲、しかし歌メロはジューダスでギターソロはレインボー、なんて芸当、どこの誰ができますか?
現在フォークロアメタルと言えば八割以上が北欧で、他の地域のものなど無視されているような状況ですが、こうして素晴らしい傑作がスペインから出ているのです。フォークロアは言ってみれば土着の音楽とメタルの融合なのですから、そのファンを名乗るなら色々な地域に目を向けなければ、と思います。フォークロア=北欧民謡+メタルでは無いのですよ。
そして評論家! お前ら、ちゃんと聴く仕事をやってるのか! FINTROLLもKORPIKLAANIも確かに素晴らしい。でも、それより前に紹介するべきバンドがここにあるだろうが。こんなにわかりやすくて面白い音を聴き逃して、フォークロアメタルを紹介した気になっているんじゃない!
ちなみにこのライブアルバム、前のライブアルバムと被っている曲はたったの5曲です。なので是非ともファンは両方揃えて、じっくり堪能してくださいな。4枚組みのつもりで一気に聴けば、他のバンドが聴けないぐらいにおなか一杯になりますよ。
2005年。名作GAIAを引っさげて、いよいよバンドはワーナーと契約。世界進出を果たします。そして11月14日。GAIAシリーズの第二段となる「GAIA II -LA VOZ DORMIDA-」を発表。
まさかこのバンドがあのワーナーと契約するとは思いませんでしたけれど、前作GAIAの音はそれぐらいの大手レーベルに相応しいものでした。それだけに、世界デビューに向けてベスト盤などを作らず、敢えて前作を世界に向けて発売したバンドの判断は正に英断だと言えるでしょう。
そして2005年11月14日、完全新作として発売された今作は、なんとそのGAIAのパート2です。これはもう、聴く前から心が躍りました。
今回の路線は、ズバリメタルオペラです。このバンドは2ndアルバム以降全てがコンセプトアルバムですけれど、何でも屋的な雰囲気はそのままに、あのRHAPSODYのような芯を感じさせるアルバムになりました。
メロディーラインの格がぐんと高くなり、そして音楽性の幅も広がり、それでいて凄くわかり易い。これは決して誇張では無いと思うんですけれど、ヘヴィメタルという音楽に詰まっている様々な要素の展覧会みたいなアルバムになっていると思います。ファンなら感涙間違いなし、ファンでなくとも一発で引き込まれること間違いなしです。これがメタル初体験なら、一生メタルが好きになるかもしれません。それほどの作品なのです。
イントロからして大作映画のサントラみたいで、これまでとは違いますもんね。そして続く疾走曲「La Voz Dormida」の感動といったら。10分近い曲ですが、あっという間に駆け抜けます。その後もポップメタルあり、ゴシックメタルあり、お得意の民謡シャッフルも聴かせながら、正統派の凄みを見せ付け、ハードロックのかっこ良さで迫り、バラードでは映画音楽級の感動を与えてくれます。そしてラストには21分の大作。これが非常に素晴らしい曲でして、21分間という無茶な長さでも最後までじっくりと聴かせてしまうマジックを持っています。
前作GAIAで最高傑作が完成したと思っていたんですけれど、この作品で軽く超えてしまいましたわ。アルバム出す度にそれがバンドの最高傑作になる、まさにバンドの鑑です。まさかここまででかくなるとは思いませんでしたけれど、このバンドのことですからまだまだでかくなるでしょう。そう確信させるだけの説得力を持った、本当の名作です。
もしこれが世界中に向けて発売されたりしたら、今日本を含めあちこちで儲けているメジャーバンドが一気にうろたえることになるでしょうね。「負けたー!」って感じで。ファンの贔屓目抜きにしても、これは大傑作だと思います。表舞台に出てくれば、それこそ歴史的名作と呼ばれてもおかしくないぐらいの。
デビューしてから流れた年月は十年以上。今やスペインの国民的バンドとなっている彼らも、国外での知名度は悲しいほどに低いです。スペインバンドの矜持でしょうか。思えば海外にどーんと出て行ったバンド、殆どありませんねえ。
しかし、スペイン国内では幾ら優秀なバンドであっても、その多くはやはり辺境ならではの野暮ったさなどを感じさせる部分がありました。あのMEDINA AZAHARAですら、エスニック感覚だけでは済まされない辺境っぽさ、つまり田舎臭さがありました。それが魅力になるという人には受けるのでしょうけれど、辺境の魅力よりもスタンダードな魅力に惹かれるタイプの人には結局、そういうバンドは受けません。ですから、スペインバンドの国内人気が外に影響することが無いという「これまで」も、わからないものではありません。
このMAGO DE OZもデビュー当時は確かにそういうバンドでした。良くも悪くもマニア向けの、田舎臭いロックバンドという出で立ちでした。しかしこのバンドは、キャリアを積めば積むほどに、そういった部分を上手に消化して、今じゃ辺境の魅力など、単なるスパイスでしかありません。
そして地球というタイトルを冠した「GAIA」シリーズに至っては、スペイン産であることを強烈に意識させながらも、一般洋楽アルバムとして高いグレードを誇るという、スペインバンドの「これまで」を覆すような傑作になっています。
「スペイン語がわからん」ということ、それからあくまで「メタルである」ということ。この二点がバンドにとってはまだまだ足枷になりそうですけれど、民謡チューンの親しみやすさ、メロディーラインの温かさ、それらを前面に押し出していけば世界的なヒットも決して夢では無いと思います。それは「LA ROSA DE LOS VIENTOS」「LA COSTA DEL SILENCIO」「DESDE MI CIELO」「HOY TOCA SER FELIZ」「CREO」といった楽曲群を聴けば、すぐにわかることでしょう。
現時点ではメタルというフィールドに於いてもマイナーバンドの一つ、それも知名度は最低クラスという絶望的な状況ですが、ワーナーへの移籍と全米制覇に向けたアルバム発売、全米ツアーとここ数年で彼らの活動は一気にその幅を広げました。また、今年はKORPIKLAANIが日本でバカ売れしたという嬉しいニュースも聞きます。あとはレーベルのプロモーション次第で、まずはメタルのフィールドにメジャーバンドとしてMAGOが名を連ねるのも、夢では無いでしょう。
コミカルでハートフルなMAGO DE OZの音楽。それは多くのメタルファンだけでなく、洋楽リスナーにもその素晴らしさをアピールするに違いありません。まずはGAIAとGAIA IIを、騙されたと思って買ってみてください。
最後になりますが、参考までにYOU TUBEで見つけたこのバンドのPVとLIVE映像を載せておきますね。
「El Santo Grial (LIVE)」
「Molinos de Viento」
「Hasta que el cuerpo aguante (LIVE)」
「Fiest Pagana (LIVE)」
「La Costa Del Silencio」
「La Rosa de los Vientos」
「La posada de los muertos」
「Hoy toca ser feliz」
私自身思い入れの強いバンドで、初めて触れた時の衝撃は今でも忘れません。
ところが、いくらスペイン一番人気と言ったところで、スペインなど所詮は辺境。多くの人はそんなバンドは知らないという状態だと思います。曲的には数年前から世界に十分通用するものを持っているのに、特にここ日本では、まったくの無名バンドでした。でした、というよりも、現在進行形で無名です。
近年では全米デビュー、そしてツアーまで行っているというのに、そのワールドワイドな活動に反して無名と言うのは、ファンとしてはあまりに悲しい。初めに言っておきますが、現在の彼らはEDGUY、RHAPSODY、あと近年ではDRAGONFORCEですか、あの辺りと比較しても全然遜色無いバンドなのです。それなのに、なぜ無名? 無論、ライターがここまで掘り下げようとはしないからです。
送られてくる音源を聴いて思ったことを書くだけ、「紹介」という仕事をしないのが今のライター。じゃあ、しゃあないからその「紹介」という仕事を、私が受け持ってやろうじゃないか。それでお金が一銭だって入るわけではないけどな。
というわけで、スペイン産フォークメタルバンド、MAGO DE OZの全アルバムを紹介します。ちなみに、フォークメタルバンドと言っても、実際はフォークの要素を取り入れた何でもありのロックバンド、といった感じです。巷のフォークメタルよりはずっと身軽で多彩な音楽性を持つバンドですので、フォークメタルマニア専用という狭い音楽やってるわけではないですよ。
デビューはなんと93年。この頃は基本的には陽気なスパニッシュロックを演るバンド、という感じで後年の姿とスムーズには繋がりませんが、何曲かでは既にフォークメタル路線が花開いています。
オズの魔法使いのキャラクターに扮したメンバーのジャケットが笑いを誘うファーストアルバム。かなり陽気でノリノリのスパニッシュロックが展開される作品です。後の姿を知っているファンは、①のアメリカンなバイオリン入りロックンロールに拍子抜けするでしょうけれど、②で早速フォークメタルを披露。当時似たようなバンドと言えばSKYCLADしかいなかったので、その中でこの品質というのは凄いことだったんじゃないでしょうか。しっかりメタルで、その上フォークして、それなのにわざとらしいおちゃらけが全く感じられない名曲です。哀愁のメロディーラインも◎。中盤スピードアップしてからのかっこ良さが絶句級でして、FINTROLLを許さないようなメタルゴッドもこれなら許してくれるだろう、と思います。
ただ、③以降また①のノリに戻ります。挙句サックスのソロまで飛び出して、どんどんメタルからかけ離れて行く始末。⑥なんてなんですか、西部劇にそのまんま使えそうな曲ですよ。「YANKEES GO HOME!」なんて叫んじゃって。好きか嫌いかで言うと私は大好きですけれど、フォークメタルとして評価できるのは②と9分の大作「Mago de oz」くらいのもので、アルバムとしてはフォークメタルファン全体にオススメ! とは言いがたいものがありますので、購入は他のアルバムを集めてからで充分だと思います。
ちなみに後のアルバムでヴォーカルを取っているJoseはまだ加入しておらず、代わりにJuanmaというヴォーカリストが参加しています。これがこの路線にぴったりの、良い声の持ち主で、アルバム一枚だけの参加となってしまったのが惜しまれます。
96年、バンドは新ヴォーカリストにJoseを迎え、ここで新路線を打ち出します。前作で見られたスパニッシュロック路線が完全に消えたわけではありませんが、今の姿に繋がるレインボー+ジューダス+フォークという路線が中心となり、バンドは独自のフォークメタルを完成させました。
新しいヴォーカリストのJoseはちょっと弱弱しいけれど、情感こもったハイトーンヴォイスの持ち主で、以降このバンドの顔となります。
タイトルには小さく「Opera Rock」と書かれていますが、そっち方面の期待をすると拍子抜けする作品です。それ風に作っている部分もありますが、全体を見ると音楽性が多彩すぎて、一本のコンセプトの上にある作品として見るにはちょっと無理があるでしょう。
ただ、その多彩な音楽性に目を向けてやると、このアルバムの評価は★三つ分ぐらい上がります。
前作を彷彿とさせるスパニッシュロックもあれば、今回は100%マジのメタルもあるし、おちゃらけ曲もあれば、100%フォークの曲もある。それだけ多彩な音楽性ながら、しかし難解さはゼロです。フォークメタルファンだけでなく、面白い音楽を探している方にもオススメしたい作品です。
バンドとしてもまだ今ほどの人気はなく、好き放題できる時期だったのだと思いますが、そんな自由な状態がプラスに作用した、創作意欲溢れる傑作です。ここらでそろそろ、といった具合にジューダス並にわかり易く、レインボー並のメロディーラインで迫るフォークメタルも登場してきて、フォークメタルファンなら卒倒すること間違いないでしょう。
さて、しかしここらでこのバンドも売れ始めてきたのでしょうか。ふらふらと自由な路線はここまでで、次からはいきなりメジャー級のメタルサウンドを完成させます。
98年、いよいよバンドはスタンダードを完成させます。メジャーに勝負、という気があったのかは知りませんが、メジャーで活躍するのに充分すぎる力量を持ったバンドであることをアピールした大傑作がこれ。
まずこのおちゃらけたジャケットに驚きますが、この後このバンドのスタンダードになります。毎回毎回、やたらと下ネタばかり盛り込んでいて笑えますけれど、音の方はそれに反してますます真面目になってきました。
イントロのトラッドがいきなりこれまでのマイナーメタルっぽさを吹き飛ばします。途中メタルになって、そのままバンド初のハロウィン風疾走曲「El Santo Grial」へ。この曲は本当、腰を抜かしますよ。ツインギターが重なるバリバリのメタルにバイオリンが絡み、そしてハンガリー舞曲へと繋がる無茶苦茶な展開を、しっかりと聴かせてくれます。まさかネオクラシカルをやろうと思ったわけではないでしょうけど、そっちのファンにもアピールできるぐらいの品質になったと思います。
タイトル曲なんて、ギターとバイオリンのハモリがソロに盛り込まれていると言う無茶苦茶な曲ですけれど、それもギャグを超えた説得力があるのですから、もう誰が文句を言えましょうか。
また、⑤はこのバンドの十八番、しかし前代未聞という「民謡シャッフル」の元祖でもあります。二枚出ているライブ盤の両方でトリを飾っていますから、これがバンド一番の代表曲と言うことになるのでしょう。確かに、その評価が相応しい名曲です。
さらに、⑪「El templo del adios」、曲名を見て勘の良い方ならピンと来たかもしれませんが、レインボーの名曲、「Temple of the King」のカヴァーです。泣きまくるヴァイオリンとスペイン語の語感によって、原曲の哀愁が五倍にも六倍にも引き出されている名演です。
他にも名曲揃いのアルバムで、とにかくアルバム全編通して、メジャーバンド並みの品質が味わえます。本当、聴いたこと無い人がお気の毒なぐらい。フォークメタルファンは全員買いましょう。メタルファンもできれば買いましょう。スペインなんて辺境の地からどれだけのものが届くのかと疑っているあなた、騙されたと思って買ってみなさいって。すぐにその偏見を恥じることになりますよ。
これだけのものが完成してしまえば、後は安泰という感じで、以降大幅な路線変更も無しに現在にいたります。
2000年、前作で完全に路線を確立したバンドはここで一つの記念碑を作り上げます。そしてそれは二枚組みの大作でありながら、スペインでゴールドディスクまで取ってしまいました。「FINISTERRA」、バンドの代表作です。
93年にこのバンドと出会った人は、一体このアルバムを聴いて何を思ったんでしょう。まさか、ここまで大きなバンドになるなんて、予想もつかなかったことだと思います。
ジャケットは相変わらずですが、このジャケットでしっかりゴールドディスクを獲得しました。二枚組みの大作ですが、それがゴールドディスク。このバンドが国民的バンドであるということが良くわかる事実です。
内容はあくまで前作の延長上にありますが、それでいてさらにスケールアップ。今回からは生楽器にフルートが加わり、(イントロ終わって)2曲目から早速大暴れしています。
ツーバスメタルwithバイオリンリフという無茶苦茶な個性は前作に引き続き花開いていますが、それでいて何の不自然さも感じさせないという究極の世界です。曲の素晴らしさもまた感動的なほどで、二枚組みという大作ながらだれることはありません。ラストに14分という大作が待ち構えていますが、そんな長い曲もしっかり聴かせてくれます。こんなバンド、滅多にいるもんじゃないですよ。本当。
出で立ちこそ変なバンドのままなんですが、このまんま世界に出ても充分戦っていけるだけの力量は持っているぞ、とその辺りを如実にアピールしてきた感じがします。そして、アピールだけに終わっていないとわかるのが⑩、「Es hora de marchar」。曲名見ても何がなんやら、ですけれど、レインボーの名曲「Rainbow Eyes」のカヴァーです。おちゃらけ民謡楽団という外見のこのバンドが、いきなり荘厳な雰囲気漂う姿になって、哀愁たっぷりに歌い上げています。なんかもう、この一曲でお腹一杯になりますよ。心洗われるこの名演は、全ての国の全ての世代を同じように感動させてくれることでしょう。誇張でも何でもなく、本当にそれぐらいの名カヴァーなのですよ。
他にも民謡シャッフル第二段となる「Fiesta Pagana」など、本当に名曲揃いのアルバムです。今度こそ本当に、全てのメタルファンにオススメしたい作品です。フォークメタルだとかそんなのは、この際どうでも良い。メタルにはまった経験があるなら、一度は聴いてみてくれい!
2002年、前作でゴールドディスクを獲得し、ノリにノッたバンドはいよいよ初のライブ盤を世に送り出します。
日本にいる以上、スペインなんて辺境の地からこのバンドがやってくる可能性など万に一つもありません。よって、このバンドはアルバムという作品に対する評価以上のものはできず、メタルには重要なライブの内容に関しては完全に闇の中でした。
しかし、ここに来てこのバンドもようやくライブ盤を出してくれました。満を持しての発売、と言うには待たされ過ぎた感じもしますが、国外展開などハナから考えていないバンドなので、まあ仕方無いでしょう。
で、肝心の内容ですが、どれだけ修正が加えられているかはわかりませんけれど、本当に聴き応えのある素晴らしいライブアルバムになっています。フルートが加わった編成での過去の作品の再現が絶句級の素晴らしさ。ベスト盤は一切出ていないバンドですけれど、アルバム収録時より素晴らしいテイクになっている曲も何曲かあって、これで充分ベスト盤の代わりになります。
演奏力もしっかりと欧米メジャー級であることが証明されましたし、ヴォーカルだってこれだけ歌えていれば充分です。加えて生楽器の暴れ具合といったら、あまりの凄さに言葉を失いますよ。スタジオ盤をなぞるだけではない、ライブの鑑みたいな演奏です。
そして毎回のお楽しみとなったカヴァー曲、今回はDisc1の9曲目、「Pensando En Ti」。って、書かれただけじゃわかりませんよね。私も聴いてびっくりしたんですけれど、「Dust in the Wind」、あのKANSASの名曲です。スペインの赤い大地を思わせるフルートによるイントロから、あの哀愁漂うイントロに繋がった瞬間の感動といったら……、今すぐにお聴かせできないのが本当に残念です。勿論このバンドがただ焼き直すわけが無く、原曲を崩さず哀愁五割増しの素晴らしいカヴァーになっています。
しかし、ライブ盤でもこれだけの作品を作って、このバンドはどこへ行くんだろう。そろそろ低迷期が来るか? と思った矢先、バンドはまた新しいバクダンを爆発させます。
2003年。前作でゴールドディスクを獲得したバンドは、ここで新たなコンセプトを掲げ、それに基づいたシリーズ「GAIA」をスタートさせます。そして、彼らはいよいよ世界の海へと船出する、その準備を始めました。
オーケストラ(風)の長い前奏で幕を開けるアルバムGAIAは、これまでのMAGO DE OZの姿からは考えられないほどのメジャー感覚で迫る名作でした。どこまで行ってもマイナーならではの味を忘れないバンドだと思っていたのに、独特の個性はそのままに、完全にメジャーバンドの出で立ちになってしまいました。それも、ベテランの風格まで漂わせています。
ジャケットはおなじみのあの絵ですが、それがこれほど惜しいと思ったのはこの作品が初めてです。内容が素晴らしすぎて、ただでさえチープなジャケットがますますチープに見えてしまうんですよ。このジャケットじゃこれっぽっちも表現できていませんけれど、音楽性の進化によって成長してきたこのバンドは、ここに来てついにその世界を広げることで新たな道を切り開きました。これまでだって充分世界に通用する作品でしたが、あくまでメタルという世界の中での話でした。しかし、この作品は違います。80年代、メジャーメタルの名作が一般洋楽として見てもしっかり名作だったように、このバンドはメタルのフィールドを出ずに一般洋楽化してしまいました。ここまで来れば本当に、洋楽ファンを巻き込んで世界的なバンドになってもおかしくない。そう思わせるスケール感です。
楽曲の充実度もこれまでとは比較にならないほどのもので、まさに全曲が名曲です。イントロ終えての②、いきなり10分超の大作ですが、その10分間全てが聴き所という凄まじい一曲です。爆走チューンは多少引っ込んだ感じですが、ツボを押さえた素晴らしい疾走チューンが3曲ほどあるので、そっち方面のファンも納得でしょう。十八番の民謡シャッフル、その最高傑作「La Costa del Silencio」は楽しげに響き、MAGO DE OZ一の名バラードとなった「La Rosa de los Vientos」は異国への憧れを聴くもの皆に抱かせてくれます。お得意のトラッドも本当に聴き応えのある曲になっていますし、オペラチックなパートが感動的なラストの大作もまた素晴らしい。最後までじっくりと鑑賞させてくれる、本当に名盤らしい名盤です。
それにしても、この好調ぶりは一体何なんでしょう。このバンド、スタート時からそれなりの作品を提供してくれていたのに、それから十年、低迷期は一度も迎えることもなく、逆にぬるま湯につかったような安定期に入ることもなく、アルバム一枚ごとに誰が聴いてもはっきりとわかるような成長をしています。
こうなったら次はどうなるのか、とただひたすら楽しみに待つだけです。このアルバムを聴けば、不安要素などゼロであることがすぐにわかるでしょう。
勿論、フォークメタルファンに限らず、メタルファンならマストゲットの作品です。相変わらず知名度は低いですが、聴いてみれば絶対、どうしてここまで知名度が低いのだ? と誰でも思いますよ。KORPIKLAANI? FINTROLL? あれよりずっと素晴らしいです。100点満点!
2004年。デビュー以来ずっと上り調子のバンドはここで全曲カヴァー+セルフカヴァーで構成された企画盤を発表します。
企画盤というとファン専用というイメージがありますが、確かにここで聴ける音は「GAIA」ほど八方美人な音ではありません。ファン専用とまではいかないと思うんですけれど、初めてこのバンドに触れるという方はあまりの個性に引いてしまうかもしれません。
しかし、内容はさすがのMAGO DE OZでして、今回もオープニングナンバー、BoneyMのカヴァー「Belfast」が凄いです。ラウドロックよりのメタルのようなギターリフにドスを効かせたヴォーカルが絡み、そしてラスプーチンに雪崩れ込んで疾走する、言葉で書けばなんじゃそりゃ、という展開ですが、聴いてみれば絶対に腰を抜かしますよ。世界は広いのです。
3曲目はGAIA収録のバラードのメタルバージョン。静かなバラードがツーバスドコドコ疾走メタルに変わっていて、笑ってしまうやら凄いやら。バラードのメロディーでロックしているということで、私はあのSTRYPERを思い出してしまいました。音の感じはちょっと違うけれど。爽やかな疾走メタルだから、SONATA ARCTICAなんかが近いのかな。
ハードロックファンにとって聞き物は「Dame tu amor」と「Dama Negra」でしょうか。前者は「Guilty of Love」、後者は「Lady in Black」、ハードロックファンにはお馴染みのあの曲のカヴァーです。前者はおしゃれなあの曲をこんなバンドがカヴァーなんて、と思わせて、意外や意外、結構はまってます。後者はもうこのバンドがカヴァーしないで誰がする! というような曲ですね。本領発揮の一曲です。
⑨はプレスリーの世界的に有名な名曲ですし、⑫はついに来た! のカヴァーです。ハワイアンの誰でしたっけ、名前は忘れましたけどその人の有名なヴァージョンに忠実なカヴァーですが、ここでもバイオリンとフルートの味付けが素晴らしい。
南米のレインボーと呼ばれたRata Blancaのカヴァーもあり、ファンにとっては本当に嬉しいアルバムであると同時に、このバンドの原点がハードロックにあることを確認できる良作です。
しかし⑦、凄くかっこいい曲があるんですけれど、これは誰のカヴァーなんでしょうか? 私も勉強不足です。イントロのギターリフからぐいっと引き込まれる疾走曲で、アルバム中でもトップクラスのかっこ良さを誇る曲なのに……。
2005年。精力的に活動を続けるバンドは早くも二枚目のライブ盤を発売します。その名も「MADRID LAS VENTAS」。マドリードの闘牛場で行ったライブを記録した歴史的一枚です。
前のライブアルバム「FOLKTERGEIST」も素晴らしい作品でしたが、まだまだマイナーバンドのおちゃらけ具合も感じられる、ファンに向けた作品である感じがありました。
ところがこの二枚目のライブ盤、そのおちゃらけ具合がぐっと引っ込み、かなりマジにメタルをやっています。前作GAIAを発表した辺りからそろそろスペインを出ようとしていたのかはわかりませんが、これでもう絶対にスペインから出るぞ、と確信させてくれるようなアルバムでした。これまでのスパニッシュメタル界の頂点はMEDINA AZAHARAやBARON ROJO辺りのバンドだったと思いますが、このアルバムで完全にそれらのバンドを超えました。
二枚通してじっくりと聴いてみて、本当に器用なバンドだと思いましたね。疾走メタルも軽快なハードロックも民謡調もプログレも軽々とこなしています。バイオリンがリフを取るシャッフル曲、しかし歌メロはジューダスでギターソロはレインボー、なんて芸当、どこの誰ができますか?
現在フォークロアメタルと言えば八割以上が北欧で、他の地域のものなど無視されているような状況ですが、こうして素晴らしい傑作がスペインから出ているのです。フォークロアは言ってみれば土着の音楽とメタルの融合なのですから、そのファンを名乗るなら色々な地域に目を向けなければ、と思います。フォークロア=北欧民謡+メタルでは無いのですよ。
そして評論家! お前ら、ちゃんと聴く仕事をやってるのか! FINTROLLもKORPIKLAANIも確かに素晴らしい。でも、それより前に紹介するべきバンドがここにあるだろうが。こんなにわかりやすくて面白い音を聴き逃して、フォークロアメタルを紹介した気になっているんじゃない!
ちなみにこのライブアルバム、前のライブアルバムと被っている曲はたったの5曲です。なので是非ともファンは両方揃えて、じっくり堪能してくださいな。4枚組みのつもりで一気に聴けば、他のバンドが聴けないぐらいにおなか一杯になりますよ。
2005年。名作GAIAを引っさげて、いよいよバンドはワーナーと契約。世界進出を果たします。そして11月14日。GAIAシリーズの第二段となる「GAIA II -LA VOZ DORMIDA-」を発表。
まさかこのバンドがあのワーナーと契約するとは思いませんでしたけれど、前作GAIAの音はそれぐらいの大手レーベルに相応しいものでした。それだけに、世界デビューに向けてベスト盤などを作らず、敢えて前作を世界に向けて発売したバンドの判断は正に英断だと言えるでしょう。
そして2005年11月14日、完全新作として発売された今作は、なんとそのGAIAのパート2です。これはもう、聴く前から心が躍りました。
今回の路線は、ズバリメタルオペラです。このバンドは2ndアルバム以降全てがコンセプトアルバムですけれど、何でも屋的な雰囲気はそのままに、あのRHAPSODYのような芯を感じさせるアルバムになりました。
メロディーラインの格がぐんと高くなり、そして音楽性の幅も広がり、それでいて凄くわかり易い。これは決して誇張では無いと思うんですけれど、ヘヴィメタルという音楽に詰まっている様々な要素の展覧会みたいなアルバムになっていると思います。ファンなら感涙間違いなし、ファンでなくとも一発で引き込まれること間違いなしです。これがメタル初体験なら、一生メタルが好きになるかもしれません。それほどの作品なのです。
イントロからして大作映画のサントラみたいで、これまでとは違いますもんね。そして続く疾走曲「La Voz Dormida」の感動といったら。10分近い曲ですが、あっという間に駆け抜けます。その後もポップメタルあり、ゴシックメタルあり、お得意の民謡シャッフルも聴かせながら、正統派の凄みを見せ付け、ハードロックのかっこ良さで迫り、バラードでは映画音楽級の感動を与えてくれます。そしてラストには21分の大作。これが非常に素晴らしい曲でして、21分間という無茶な長さでも最後までじっくりと聴かせてしまうマジックを持っています。
前作GAIAで最高傑作が完成したと思っていたんですけれど、この作品で軽く超えてしまいましたわ。アルバム出す度にそれがバンドの最高傑作になる、まさにバンドの鑑です。まさかここまででかくなるとは思いませんでしたけれど、このバンドのことですからまだまだでかくなるでしょう。そう確信させるだけの説得力を持った、本当の名作です。
もしこれが世界中に向けて発売されたりしたら、今日本を含めあちこちで儲けているメジャーバンドが一気にうろたえることになるでしょうね。「負けたー!」って感じで。ファンの贔屓目抜きにしても、これは大傑作だと思います。表舞台に出てくれば、それこそ歴史的名作と呼ばれてもおかしくないぐらいの。
デビューしてから流れた年月は十年以上。今やスペインの国民的バンドとなっている彼らも、国外での知名度は悲しいほどに低いです。スペインバンドの矜持でしょうか。思えば海外にどーんと出て行ったバンド、殆どありませんねえ。
しかし、スペイン国内では幾ら優秀なバンドであっても、その多くはやはり辺境ならではの野暮ったさなどを感じさせる部分がありました。あのMEDINA AZAHARAですら、エスニック感覚だけでは済まされない辺境っぽさ、つまり田舎臭さがありました。それが魅力になるという人には受けるのでしょうけれど、辺境の魅力よりもスタンダードな魅力に惹かれるタイプの人には結局、そういうバンドは受けません。ですから、スペインバンドの国内人気が外に影響することが無いという「これまで」も、わからないものではありません。
このMAGO DE OZもデビュー当時は確かにそういうバンドでした。良くも悪くもマニア向けの、田舎臭いロックバンドという出で立ちでした。しかしこのバンドは、キャリアを積めば積むほどに、そういった部分を上手に消化して、今じゃ辺境の魅力など、単なるスパイスでしかありません。
そして地球というタイトルを冠した「GAIA」シリーズに至っては、スペイン産であることを強烈に意識させながらも、一般洋楽アルバムとして高いグレードを誇るという、スペインバンドの「これまで」を覆すような傑作になっています。
「スペイン語がわからん」ということ、それからあくまで「メタルである」ということ。この二点がバンドにとってはまだまだ足枷になりそうですけれど、民謡チューンの親しみやすさ、メロディーラインの温かさ、それらを前面に押し出していけば世界的なヒットも決して夢では無いと思います。それは「LA ROSA DE LOS VIENTOS」「LA COSTA DEL SILENCIO」「DESDE MI CIELO」「HOY TOCA SER FELIZ」「CREO」といった楽曲群を聴けば、すぐにわかることでしょう。
現時点ではメタルというフィールドに於いてもマイナーバンドの一つ、それも知名度は最低クラスという絶望的な状況ですが、ワーナーへの移籍と全米制覇に向けたアルバム発売、全米ツアーとここ数年で彼らの活動は一気にその幅を広げました。また、今年はKORPIKLAANIが日本でバカ売れしたという嬉しいニュースも聞きます。あとはレーベルのプロモーション次第で、まずはメタルのフィールドにメジャーバンドとしてMAGOが名を連ねるのも、夢では無いでしょう。
コミカルでハートフルなMAGO DE OZの音楽。それは多くのメタルファンだけでなく、洋楽リスナーにもその素晴らしさをアピールするに違いありません。まずはGAIAとGAIA IIを、騙されたと思って買ってみてください。
最後になりますが、参考までにYOU TUBEで見つけたこのバンドのPVとLIVE映像を載せておきますね。
「El Santo Grial (LIVE)」
「Molinos de Viento」
「Hasta que el cuerpo aguante (LIVE)」
「Fiest Pagana (LIVE)」
「La Costa Del Silencio」
「La Rosa de los Vientos」
「La posada de los muertos」
「Hoy toca ser feliz」
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おお~
ごめんなさ~い!
今週一週間はPC開く暇もありませんでした。
返信送れて、本当にごめんなさい。
ごめんなさいついでに、来週も金曜から10日ほど入院するので、また返信できません。これもごめんなさい。
こんな特集組むのは私ぐらいだと思うんですが、じゃあ役に立つかと言うと、ある無茶苦茶限られた層にしか、役に立たないんですよね~(苦笑)
でも、その限られた層のお役に立てたのなら、本望でございます。
「GAIA II」はバンドの最高傑作だと私は思ってます。アルバム出す度にスケールでかくなっていますので、「GAIA」が気に入られたのなら、絶対オススメですよ。
返信送れて、本当にごめんなさい。
ごめんなさいついでに、来週も金曜から10日ほど入院するので、また返信できません。これもごめんなさい。
こんな特集組むのは私ぐらいだと思うんですが、じゃあ役に立つかと言うと、ある無茶苦茶限られた層にしか、役に立たないんですよね~(苦笑)
でも、その限られた層のお役に立てたのなら、本望でございます。
「GAIA II」はバンドの最高傑作だと私は思ってます。アルバム出す度にスケールでかくなっていますので、「GAIA」が気に入られたのなら、絶対オススメですよ。
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おお~、以前にこんな特集をされてたんですね。凄いです。とりあえず「Gaia II」がますます欲しくなってしまいました(笑)
他のアルバムも持ってないものが何枚もあるので、是非順番に揃えていこうと思います。